Japan Ladies Tennis Federation

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テニスの普及と指導

テニスにおける障害とその治療

日本テニス協会テクニカルサイエンスサポート部会
筑波大学 整形外科
金森 章浩
 kanamori@md.tsukuba.ac.jp

 テニスの競技特性として、ラケットを使うスポーツ・こまかいフットワークが必要・ジュニアからシニアまで幅広い年齢でプレイされることがあげられる。テニスにおいて問題となるスポーツ障害は 1)急性外傷(いわゆるケガ)2)オーバーユース(使い過ぎ)3)ジュニア特有の障害 4)熱中症 などがある。

1)急性外傷 ほとんどが脚におこり、その中でも足首の捻挫が最も多い。捻挫といっても靭帯の微細な断裂から完全断裂までさまざまである。コート上で起きた場合にはRICE処置をおこなう。RICE処置とは急性外傷に対する応急処置で、Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)をおこなうことにより、外傷後の腫れや痛みを防止する効果がある。靭帯が修復されるのには最低6週間はかかり、中途半端にテニスを再開すると治りかけた靭帯がまた傷むので注意する。その他にもアキレス腱断裂やテニスレッグといわれるふくらはぎの肉離れも多い。この場合にもRICE処置をおこなった後に病院に行くのが望ましい。

2)オーバーユース テニス肘やテニス肩がある。テニス肘は手首を動かす筋肉が肘に付着する部分が炎症をおこすことで発症する。特に初心者がバックハンドを打つことでおきることが多く、肘の外側が痛む。ガットのテンションやフォームに注意し、プレイ前のストレッチをしっかりおこなう。上級者になるとフォアハンドの強打で肘内側が痛むこともある。テニス肩は肩の中の腱板が腕を上げた際に肩甲骨とぶつかり炎症をおこし、サービスやスマッシュで腕を上げた時に痛むことが多い。肩の腱板トレーニング(インナーマッスルトレーニング)やストレッチをおこない予防・治療する。オーバーユース障害で痛みが強い場合には、練習を休みその部分のストレッチやフォームの見直しをすることが重要で、中途半端に続けていると腱の炎症は悪化し続けるので注意する。

3)ジュニア選手の障害 成長期には筋肉より骨の成長が速いため、筋肉は相対的に短くなり固くなる。その結果、膝蓋腱の付着部の骨が剥離するオスグッド病や膝蓋腱の炎症(ジャンパー膝)などがおこりやすい。ジュニア選手は自分が今どの程度成長しているのかをしっかり知っておく必要があり、定期的に身長測定をしておくことが望ましい。この成長スパートの時期にはしっかりストレッチをおこない、もし障害をきたした場合には練習を休む勇気も必要である。

4)熱中症 熱中症とは体の内外の‘あつさ’が原因で発生する障害の総称で、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病などに分けられる。熱失神は皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少しておこるもので、めまい、失神などがみられる。熱疲労は大量の汗をかき、水分の補給が追いつかず脱水がおこり、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などがみられる。このような状態になったら、涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復する。 吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合には病院に運び、点滴を受ける必要がある。
 熱射病は体温の上昇のため中枢機能に異常をきたした状態で、意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)が特徴で、頭痛、吐き気、めまいなどの前駆症状やショック状態などもみられる。進行すれば 、全身臓器の血管がつまって臓器障害を合併することが多く、死の危険のある緊急事態である。そのため体を冷やしながら集中治療のできる病院へ一刻も早く運ぶ必要がある。いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するため、現場での処置が重要で、熱射病が疑われる場合には、直ちに冷却処置を開始する。冷却は、皮膚を直接冷やすより、全身に水をかけ、濡れタオルを当てて扇ぐ方が、気化熱による熱放散を促進させるので効率がよくなる。また、頸部、腋下(脇の下)、鼠径部(大腿部の付け根)などの大きい血管を直接冷やす方法も効果的である。

 国際テニス連盟では 1)練習は朝や夕に 2)30分ごとの休憩 3)チェンジコートの際の日除け 4)顔をぬらし首に濡れたタオル 5)ウォームアップからの水分補給 6)必ず帽子をかぶる 7)暑いところでの大会参加では4日から1週間前から慣れさせる 8)天候と練習プログラムをあわせる などで熱中症を予防するよう推奨している。(http://nettyu.jp/)



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